ちらしのうら

感情の言語化をめざして

旅立ちの時を鑑賞して

リヴァー・フェニックス主演の「旅立ちの時(原題:RUNNING ON EMPTY)」を鑑賞。人生のベストムービーに殿堂入りした。

テロリストの両親を持ち、FBIに指名手配されている身の上なために、半年ごとに引っ越し、名前・髪色を変える生活をする少年と家族の物語。あらすじだけ読むとヘビーな印象を持つけど、親子間の確執は一切なく、愛し愛される理想の親子関係を描いているヒューマンドラマだ。

引っ越したある土地で出会う少女との恋、ピアニストとしての才能を認められ、大学へ進学する夢。それらを叶えるためには愛する家族と離別せねばならず、心を揺るがす17歳の繊細な心を見事に表現しているリヴァーの演技が素晴らしい。

自分自身ではどうしようもない理由から嘘をつき続けてきた(つかざるを得なかった)過去と決別し、他人に左右されずに自分の人生を生きろ、という強いメッセージを受け取り、ラストシーンは涙が溢れた。

お気に入りのシーンは、母親の誕生日を家族とガールフレンドで祝うところ。このシーンでジェイムス・テイラーのFire and Rainが挿入歌として流れるのだけど、このシーンが本当に、本当に大好き!現実世界でも恋人同士だったリヴァーとマーサ・プリプトンがじゃれあい、抱き合い、照れ笑いをするのがとってもキュート。心を鷲掴みにされた。何よりこの挿入歌が映画とマッチしていて最高なのだ…(この曲が入っているSweet Baby Jamesというアルバムもとてもいい!LPが欲しい)

そして何より、この映画の主人公とリヴァーの短い人生がリンクしているところが多々あり(彼も幼少期に一家で土地を転々とし、ストリートミュージシャンとして家計を支えていたらしい)、だからこそこの役柄を演じきれたのかな、とも思った。複雑な家庭の事情で、まだ子どもなのに大人にならざるを得なかった人の寂しさを知っているんだろう。その演技や自然の中で走り回る素に近い彼を見ていると、きっと感性が豊かで、繊細な心を持っているんだろうと感じ、綺麗な人だと心底思う。だからこそ、彼の死から20年以上経過していても、人々はその美しさに魅了され続けるんだろう。

彼が生きていればどんな俳優になり、どんな人生を歩んでいたのかとか、タラレバで語るよりも、スクリーンの中で輝き、生き続ける彼をただ見ていたいな。メリークリスマス。

旅立ちの時 (字幕版)

旅立ちの時 (字幕版)